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1-6
叔母は恐ろしく簡単に許諾した。
父にも電話で一報を入れてもらった。
頃合いを見て迎えに来ることになった。
期限が伸びたことを知ると
彼女は解放されたように、はしゃいで見せた。
私の言葉数が十とするならば、大げさでなく
彼女は百や千の言葉に音を与えていた。
話すことに疲れると二階の部屋や隣接する作業場に私を連れまわした。
作業場では、祖父が黒い汚れが付いた冷蔵庫を開け、中から茶色い瓶に入った小さいジュースをくれた。
半開放的な作業場は、私にとっては外と同義でありそこにある冷蔵庫は、とても異質で特別に感じた。
冬にはいつも蜜柑をくれた。
段ボール箱に片手を突っ込み、三つほど掴み取る。
私は両手で受け取った。
作業場で剥いて食べる。次第に祖父の剥き方を
真似るようになった。
皮のまま半分に割り、さらに半分に割る。
蜜柑の粒が3つほどくっついた塊を一つとして
皮から外して食べる。
私は今でもそうしている。
陽菜と二人で、ドラム缶で炊いている火に
皮を投げ込んだ。
水が爆ぜる乾いた音が鳴る。
日が隠れはじめ、影の輪郭は水にぬれたように溶けだしている。
祖母が夕食の準備を始めていた。
敷地の前の道路がライトで照らされ、
一台の車が入ってくる。
「茂雄さんが帰ってきましたわ。」
叔母がそう言った。
陽菜は「お父さん」と呼び
祖父や祖母も「茂雄さん」と呼ぶ。
私は何と呼べばいいだろうか。
陽菜に対する言葉使いでいいのだろうか。
敬語を使うべきだろうか。
敬語を使う子供なぞ、可愛げがないと思われないだろうか。
軽い扉が開いた。
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