ジャムよりも甘く

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 分かっている。品物は、別にユイフェルが優しいから持ってきてくれたわけではないのだと。それが、『仕事』だったからだろう。『義務』だったからだろう。それにも関わらず、こうしてもう会えなくなることを、教えに来てくれただけでも、ユイフェルは優しい。本当は、好きだというのは社交辞令で、俺を抱いたのも俺しか食べられるものがなかったからなのかもしれないが、それでもいい。俺は、そう念じながらユイフェルを見る。 「他にね、この前きみは、僕を好きだと言ってくれたよね?」 「うん……迷惑だったよな」 「? 迷惑? 僕もきみのことが大好きだときちんと言ったと思うけど?」 「……社交辞令だったんだろう? 分かってる」 「なにが分かってるというの? 誤解だよ。心外だな、僕はきちんとマイスを愛してる」  不機嫌そうな声になったユイフェルが、今度は両腕で俺を抱きしめた。俺はその言葉が嬉しくて、額をユイフェルの胸板に押しつける。すると床まで涙がぽたりと落ちていった。 「そちらも――つまり、相思相愛になったことも教会に伝えて、結婚の許可をもらったんだよ。幸い、僕の信じる神様は、同性同士の結婚も推奨しているし、聖職者でも結婚していいことになっているからね。今回王都から来た使者は、このままここで僕の後任になるから、僕は仕事の引き継ぎをしていたんだけど、他に、結婚するための手続きもしていたから、色々と立て込んでいて、ここには来られなかったんだよ。具体的に言うと、その使者に邪魔をされてね。ケーキを休ませてあげろと小言が酷かった。これだから、フォークの先輩なんて、嫌なんだよ。後任だけど、僕より年上で、頭が硬いんだ」  ぶつぶつとユイフェルが呟いている。俺は、その言葉を理解して、おずおずと顔を上げた。するとまた指で、ユイフェルが俺の頬の涙を拭いてくれた。 「ケーキを休ませる? ……結婚? 結婚するから、帰っちゃうのか?」 「毎日抱き潰していたら、きみの体に障ると言ってね。結婚はするつもりだし、帰るけど? なにをいってるの? きみのことが好きなんだから、結婚相手はきみだよ。なんだかそのニュアンスだと、僕が別の誰かと結婚するつもりみたいに聞こえるんだけど」 「お、俺と結婚?」 「? きみこそ、俺の事が好きだったというのは、社交辞令だったのかな?」 「ち、違う! 俺は本当にユイフェルが好きだ!」
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