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俺は思わず大きな声で言った。するとユイフェルが破顔した。
「うん。だったら、好き同士なんだから、結婚してくれるよね?」
「す、する! 俺でいいなら、する! ユイフェルと結婚したい。結婚したら、ずっとそばにいられるんだよな? 一緒にいられなくても、家族になれるんだよな? そうなれたら、俺は村でこれからも一人でも……我慢できると思う」
「家族になれるし、一緒にもいられるよ。少なくとも、僕はきみと一緒にいたい。だからね、マイス。僕と一緒に、王都に来てくれるよね?」
「――えっ?」
「来てくれるよね?」
「俺が王都に……?」
「来てね?」
「!」
「嫌なの? 僕と一緒にいたくないの?」
「嫌じゃない! 俺はユイフェルのそばにいたい。で、でも……王都……俺、俺、考えてみたこともなくて……」
「王都はこの村と違って、きみの父親について、あれやこれやと噂を立てる人は、少ないと思うよ。みんな、他人には興味が無いからね。一部の被害者家族や、王宮に仕える人くらいじゃないかな。だから、この村にいるより、ずっと楽しいと思うよ。きみが直接パンを買いに行っても、勿論カビなんかはえていないはずだ。この村のパン屋さんは、きみにはカビのはえたパンが丁度いいから、廃棄品を売っていたと豪語していたよ」
「……」
「行こう、僕と一緒に」
真剣な目をして、ユイフェルが俺の目を覗き込む。
俺は、その瞳を見つめ返してから、思わず大きく頷いた。
――その後。
俺はユイフェルと共に、王都へと向かって旅立った。俺の方はほとんど荷物がなかった。
二人で馬車に揺られ、俺は初めて乗るから、窓から外を見る度に物珍しくて落ち着かなかった。終始そわそわしながら喜んでいたら、隣でユイフェルが優しい顔で微笑していた。
「風景もいいけど、きちんと僕のことも見てね」
そういったユイフェルに、俺は肩を抱き寄せられてばかりだった。
その後俺達は結婚し、王都大聖堂が用意してくれた家で暮らし始めた。
最近、俺は料理を覚え、他の家事も上達した。
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