緊急事態の予備に

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緊急事態の予備に

「フォッフォフォ、なんともスゴいな。咲耶(サク)ちゃん。これで打ち止めかな?」 「いやいやァ、まだ予備のためにクサリ鎌を二、三百本。鉄の爪が五、六十本。あと手裏剣が二千本ほどね。その他、緊急事態のためにヤリや火縄銃も用意してあるわ」  咲耶は偉そうに胸を張って応えた。 「どんな緊急事態だ。どこの合戦に出かける気なんだ。関ヶ原の合戦にでも出向くつもりかァ?」  思わずボクは怒鳴りつけた。 「まァ良いではないか。しかし咲耶(サク)ちゃんには悪いが、この武器は全部没収じゃなァ」  万城目校長は山のような武器を見て苦笑した。 「えェッ、没収ゥ?」  咲耶も素っ頓狂な声で聞き返した。 「そうじゃァ。すまんなァ。こんな武器を教室へ持ち込ませるワケにはいかないんじゃァ。咲耶(サク)ちゃん」  校長先生は(さと)すように告げた。 「ジィジめェ。(たくら)みおったな」  咲耶は横目で校長先生を睨んだ。 「コラコラ、校長先生を睨むな。それからジィジって呼ぶなよ」 「咲耶(サク)ちゃん。これから教室へは、危険な武器の持ち込みは禁止じゃァ。頼むぞ」  万城目校長は(さと)すように優しく告げた。 「いやいや、だって、教室には得体のしれない伊賀モノや極悪非道な風魔の忍者が潜んでいるかもしれないわ。敵襲に備え、万全の備えをしないと」  しかし咲耶も簡単には引き下がらない。 「どんだけ敵がいるんだ」  ボクは頭を抱えた。 「フフゥン、今から教室という名の戦場へ向かうと思うと、腕が鳴るな」  咲耶は微笑みながら肩をグルグルと回してウォーミングアップを始めた。 「鳴らすな。腕なんか。教室という名の戦場って言うのはただの比喩(ひゆ)なんだから。本当の戦場じゃないから」  なんとか言いくるめようとした。 「伊賀忍者は近代兵器の遠隔操縦式のドローンを使って攻撃を仕掛けてくるという。甲賀忍者の咲耶もそれなりの装備をしなければならないだろう」 「あのねェ、ムチャクチャ言わないでくれよ」  ボクは呆れて二の句が継げない。
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