7人が本棚に入れています
本棚に追加
忍ばない甲賀忍者 咲耶
ボクはこの春より東京都下の田無市にある私立魔界野小学校で教職を取っている新米教師だ。
名前を伊賀野藤丸と言った。
幼い頃からよく伊賀忍者の子孫かと間違われるが、苗字が伊賀野というだけで忍者とはまったく関係がない。
夏休み直前のある早朝、ボクの屋敷へ謎の女忍者、咲耶が『道場破り』だと怒鳴り込んできた。
まるで悪役レスラーの乱入のように傍若無人だ。
あらかじめ断っておくが、ボクの家は道場ではない。建てつけが古いだけで無駄にだだっ広いが普通の民家だ。
近所では『伊賀の幽霊屋敷』と陰口を叩かれていた。
朝食もそこそこに、ボクは慌ただしく着替えをしながら咲耶に断った。
「あのォ悪いけどボクは、これから小学校へ行かなきゃならないので。戸締まりを宜しくお願いしますねえェ」
このまま彼女も出て行ってくれると助かる。
「わかった。致し方ない。咲耶も一緒に小学校へ同行してやろう!」
咲耶は自撮り棒でライブ配信しながら徐ろにピンクのランドセルを背負った。
忍者のようなコスプレのままだ。
「おいおい、まさか、そんな恰好で小学校へ着いてくるのか?」
ボクは呆れてしまった。いくら小学校は私服オッケーだとしても小学生にしてはあまりにも突飛な恰好だ。
「わかったわ!」
なぜか素直に咲耶はうなずいた。
最初のコメントを投稿しよう!