忍ばない甲賀忍者 咲耶

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忍ばない甲賀忍者 咲耶

 ボクはこの春より東京都下の田無市(たむシティ)にある私立魔界野小学校で教職を取っている新米教師だ。  名前を伊賀野(イガの)藤丸(ふじまる)と言った。  幼い頃からよく伊賀忍者の子孫かと間違われるが、苗字が伊賀野というだけで忍者とはまったく関係がない。  夏休み直前のある早朝、ボクの屋敷へ謎の女忍者(くノ一)、咲耶が『道場破り』だと怒鳴り込んできた。  まるで悪役(ヒール)レスラーの乱入のように傍若無人だ。  あらかじめ断っておくが、ボクの家は道場ではない。建てつけが古いだけで無駄にだだっ広いが普通の民家だ。  近所では『伊賀の幽霊屋敷』と陰口を叩かれていた。  朝食もそこそこに、ボクは慌ただしく着替えをしながら咲耶に断った。 「あのォ悪いけどボクは、これから小学校へ行かなきゃならないので。戸締まりを宜しくお願いしますねえェ」  このまま彼女も出て行ってくれると助かる。 「わかった。(いた)し方ない。咲耶も一緒に小学校へ同行してやろう!」  咲耶は自撮り棒でライブ配信しながら(おもむ)ろにピンクのランドセルを背負った。  忍者のようなコスプレのままだ。 「おいおい、まさか、そんな恰好で小学校へ着いてくるのか?」  ボクは呆れてしまった。いくら小学校は私服オッケーだとしても小学生にしてはあまりにも突飛な恰好だ。 「わかったわ!」  なぜか素直に咲耶はうなずいた。
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