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とびっきりランジェリーファッションで
「わかったわ!」
なぜか素直に咲耶はうなずいた。
「伊賀の影丸がそこまで言うなら咲耶にも考えがある。とびっきりのランジェリーファッションで、華麗に小学校デビューとシャレこもうか」
悠然と咲耶は見せつけるように女忍者のコスチュームを脱ぎ始めた。
「おいおい、何をしているんだ。脱ぐな!」
慌ててボクは咲耶の手を制した。
「触るな。無礼モノ」
途端に彼女は怒り出してボクの手を勢いよく払いのけた。
「痛ッたたッ、あのですねェ。無礼者って、ふざけないでください。ランジェリーファッションで小学校へ行く女子高生がどこの世界にいるんですか?」
女子高生がランジェリーファッションで登校していたら警察官に捕まりかねない。ただでさえ朝は忙しいのだ。
「フフゥン、過去の前例に囚われないのが女忍者、甲賀忍者の咲耶だ」
彼女はまったく悪気がないようだ。笑みを浮かべ、余裕の表情で宣言した。
「はァ、どんなくノ一なんですか?」
ボクは頭を抱えそうだ。
「忍者なのに忍ばない! ゴージャスでなおかつ派手に目立つ事こそ、咲耶たち二十一世紀を生きる甲賀忍者のモットーなのだ」
「いやいや、どこの忍者のモットーなんですか。忍者なのに忍ばないって、どういうことなんです。忍者は諜報活動が主な仕事でしょう。目立って、どうするんですか。漫画のス○イファミリーじゃァないんですから!」
「お黙り昭和か。伊賀の影丸!」
「えェッ、いやいや、ボクは伊賀野藤丸だけど」
伊賀忍者とはまったく関係ない。
「良いこと。そんな隠れてコソコソやるような古くさい忍者は二十一世紀に入ってすぐに絶滅したのよ」
「えェッ?」古くさい忍者って。
だいたい忍者なんか、古くさくて当たり前だろう。とっくの昔に絶滅したんじゃないのか。
「今や忍者もライブ配信して目立たないと生き残っていけない時代なのよ」
咲耶は微笑みを浮かべ、盛んに自撮り棒で自らを映していた。まるでユーチューバーだ。
「ううゥッ、マジか?」
果たしてこの子以外にライブ配信している忍者なんているのだろうか。
「さァ、さっそく行こうか。小学校へ」
咲耶は可愛らしく自撮りのスマホにピースをして登校していった。
「ちょっと勝手に行かないでくださいよォ」
ボクは急いで彼女のあとに続いた。
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