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Siriの穴へ
可愛らしい顔をしているが不作法にもほどがあるだろう。
「時に、咲耶ちゃんと呼んで良いかな?」
万城目校長はにこやかに微笑んだ。
「ウム、ジィジが呼びたいのならよかろう」
あくまでも咲耶は上から目線だ。
「コラコラ、偉そうに校長先生をジィジって呼ぶな!」
慌ててボクは注意した。
「フォフォフォ、良い良い。して咲耶ちゃんはお幾つかな?」
「ジィジ、女子に年齢を訊くのはセクハラなのじゃァ!」
途端に咲耶はプゥッと頬を膨らませた。
「あのねえェ」ボクは頭を抱えた。
「いやいや、すまんな。小学生にしては大きいので女子高生くらいじゃないかな?」
「フフゥン、お目が高いな。咲耶は先々週まで女子高に通っていたのだが、伊賀の密偵に小学校を卒業していないことをバラされて、このたび女子高を退学になり晴れてフリーエージェントになったのじゃァ」
「いやいや、小学校は義務教育だから不登校で単位が足りなくても卒業できるんだけど」
ボクは話しの途中、ツッコミを入れた。
「フフッ、咲耶は小学校から帰宅途中、甲賀忍者に拐かされ、どさくさに紛れて甲賀の里の『Siriの穴』へ放り込まれたのじゃァ」
「え、『シリの穴』へ?」
万城目校長は目をまん丸にして聞き返した。
「いや、間違っては困る。『シリの穴』ではない。『Siriの穴』なのじゃァ」
咲耶が言うには、なんとなくイントネーションが違うようだ。
「あのねえェ。どっちも卑猥だから、それ以上『Siriの穴』の話しをするなよ。なんとなく怖いだろう」
ボクは無理やり割り込んで話しを遮った。
「なので、咲耶は小学校を卒業することなく今に至ったと言うわけなのじゃァ」
「ほォ」なぜか校長は納得したみたいだ。
「いやァ、どんな支離滅裂な身の上話しなんですか」
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