プロローグ

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プロローグ

病饠屋良魅は僕のクラスメートだ。 教室に初めて足を踏み入れた時、正直言ってビビった。白菫色の髪に、ビビッドカラーのファッション、そしてーー赤い瞳。褐色ばかりの森に、モンスターが突然現れたようだった。 それが病饠屋良魅だった。 ド派手な彼女はクラスのなかでも浮いていて、しかし彼女はそれを気にする様子もなく、ひとりの学校生活を謳歌していた。別に人と群れることが好きではない、けれどひとりぼっち、仲間外れが怖くて適当に浅い関係を築く僕は彼女のことが羨ましかった。 ごくごくどこにでもいるような普通の男子の僕が、一生関わり合うことはないと思っていた。 「どこにでもいる人なんていない。野菜で一個とか書いてあるレシピあるけど、  全く同じグラムの個体なんて逆に珍しいでしょう。いや、それぞれがオンリーワンとかいいこと言いたいんじゃなくて、逆にみんな少しずつバラバラだから全く一緒にはなれないし、世の中難しいってこと。  1個体にはなれるけど、オンリーワンになるのは難しそうだよね」 と。 彼女なら、僕の迂闊な発言一つで何時間も語れるのだろう。 ここでは、僕が彼女の言葉を聞いて、議論して、丁々発止を繰り広げた記録を書き連ねていこうと思う。議論をするのが好きな彼女の、言行録を載せていこうと思う。 つまらないかもしれないが、一章だけでいいので読んでもらえたら幸いだ。
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