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そして、結婚式当日。
タキシード姿の学は、緊張の面持ちで花梨を待ち受けていた。
「新婦花梨さん、お父様、そして愛犬のブン太くんと共に入場です」
温かい拍手が送られる中、花梨と義理の父を後ろに従えて、ブン太がとことこ歩いてくる。
グレーのタキシードを着て、首もとには蝶ネクタイ。
なるほど、昨日の服装は、結婚式用の礼装だったわけだ。
一番最初にバージンロードを歩き終えたブン太が、学を見上げる。
眠たそうなその目で、“わかってるんだろうな?”と語りかけてくる。
学はブン太に微笑みかけて、小さくうなづく。
わかってるよ。
花梨と一緒に幸せになる。
お前の分も、彼女を愛し続ける。
……男同士の約束だからな。
いつもはにらみつけてくるブン太が、今日はにこやかに笑っているような気がした。
【おわり】
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