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外で立ち話もなんだから、うち来るか?
そう提案したら、ブン太は素直にうなづいた。
そして今、リビングに置いてある一人用のビーズクッションの上にちょこんと座っている。
「なんか飲むか?」
「リンゴジュース。ストレートのやつ」
「濃縮還元のしかないんだけど」
「じゃあ水道水でいい」
水道水を入れたコップをブン太に渡し、学は隣のビーズクッションに座った。
「なあ、なんで人間の姿になってるんだ?」
「一度でいいから、人語を話せるようにして、って星に祈ったら、願いが叶った」
「……なるほどね」
荒唐無稽な話だが、現にブン太が隣にいる以上、信じるしかない。
「そこまでして、俺に話したかったことって、何?」
「決まってる、花梨のことだ」
「一発殴らせろ的な?」
「そんなの時間のムダ。だって、何度吠えかかってもにらんでも、学は花梨を諦めなかっただろ?」
「あー、そうだな」
花梨と付き合う前から今日まで、ブン太はずっと敵がい心むき出しだった。
「花梨ってさ、ちょっと抜けてるとこあるだろ?だから、オレ、花梨に近づく有象無象どもには、片っぱしから吠えかかって追い払ってきた」
「つまり、俺も有象無象のひとりだったわけ?」
「うん」
潔い肯定がいっそ気持ちいい。
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