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第4話
······まぁ、
「それがなにか?」
正直、僕の個人情報が流出してもどうでも良かった。
大した情報なんてないし、痛くも痒くもない。
そう思っている僕にヒロさんは楽しそうな表情を浮かべて聞いた。
「だけど、実はこれが計画殺人で犯人は俺······って言ったらどうする?」
「······!?」
今、彼はなんて······?
計画殺人?
あの子はただの転落事故ではなく、ヒロさんが殺した?
それは、にわかには信じられない言葉だった。
「ど、動機は? ヒロさんは、あの子と会ったこと······あるの?」
「ないよ。殺す当日まで写真以外で顔を見なかったし、最後まで話すことはなかった」
「じゃあ、なんで殺したの······?」
殺すは言葉ほど簡単にできることじゃない。
僕もそうだし、大半の人間は先のことを恐れて実行しない。
理性や常識、それらはすべて殺人を否定している。
例外があるとすれば、衝動的なもの。
でもヒロさんは話したこともないし、当日まで会わなかったと答えた。
ならなんで······?
「『愛してるって言うなら、見せてよ。見えないものほど、信じられないものはないから』」
「えっ······」
「覚えてる? ナナが俺に言った、この言葉」
それはたしか、半年ほど前に僕が発した言葉だった。
「俺がナナに『愛してる』って言ったら、冷めた目で『愛ってなに?』返された。そして、さっきの言葉を······俺の愛を証明するよう言われた」
「だ、だって······」
ヒロさんと出会ったきっかけは援助交際······いわゆるパパ活。
それだって犯罪だし、僕自身好きで始めたんじゃない。
『そのまあまあ整った顔でおっさんから金巻き上げてきてね、おにーちゃんっ』
不快でしかないこの仕事。
ヒロさんは金払いが1番良いだけで、会う人全員が嫌いだった。
「所詮、僕とあなたは体とお金の関係で、愛なんて──」
「だからね、証明した。妹さんを殺して、ナナへ俺の愛を見せた」
「は······?」
「妹さん、嫌いなんだよね。ご両親からの寵愛を一身に受けていて、まるで自分を奴隷のように扱う彼女のことが」
ヒロさんのささやくようなその言葉によって、僕は無意識に過去の出来事を思い出した。
それは一生思い出したくなかった、ただただ惨めな過去。
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