目の保養 side絵理子

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目の保養 side絵理子

「おはようございます。」  出勤途中に買ってきたコーヒーを飲んでいると低めの声が聞こえてきたので背筋をピッと伸ばす。  うちの課長は、182センチと身長も高いし、顔だけならば10人中5人いや、6人はかっこいいと言うだろう。  しかし社内の女子には『優しそう』と言われるが、モテてはいない。  それは体格がいいという言葉で済まされない確実にぽっこりと出たお腹のせいだと言われている。  そんな課長が優しげな表情を浮かべ、事務所内に入って来た。 「おはようございます。課長。」 「横澤さん、おはよう。いつも早いですね。」 「いえ。」  今日も挨拶が出来たと喜ぶ私は、『ポチャ』とか『ぷよっ』といった人が、どストライク……つまり課長は私の理想のタイプだったりする。  でもそんなことを言って課長に引かれたくないから今日もピリリと塩対応を心掛ける。 「おはよう、絵理ちゃん。」 「おはよう、弥生ちゃん。」  同期で同じフロアの弥生ちゃんが、書類ケースを運んで来たので、課長を陰からそっと愛でるタイムが強制終了となる。 「今日も麻呂ウォッチングしてたの?」 「当然のルーティンだよ。」  太川裕哉課長は、見た目が丸いせいか平安貴族っぽいと言われて麻呂というあだ名が付いている。  でも私にとっては全体的に丸いが、お肉が弛みすぎてはいないそのフォルムが最っ高だし、平安貴族が太っていたかなんて分からないのだから麻呂なんて呼ぶ気はない。  そういう私自身もポチャ子である。食べ歩きが大好きで運動が苦手。それでもポチャ以上にはならないようにとダイエットは常に関心事だ。  
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