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昼休み side裕哉
12時のチャイムが鳴った。
いつも通り社食に行き、日替わりC定食を食べる。以前より食事には気をつけるようになったが、うちの社食はそんな人向けのヘルシーメニューがあるのだ。
しかもカロリーオフなのに見た目や味がしっかりしていて満足度◎。料理が苦手な私の強い味方だ。
「太川課長、隣いいですか?」
「あ、どうぞ」
6人掛けの社食のテーブルをひとりで独占する気はないので、誰か確認することなく返事をすると目の前とすぐ横に座る気配がした。
いや、私以外座っていないんだから、なぜ横と前に?
そう思いながら顔を上げると目の前に受付の中原瞳、隣に資材課の本郷結香がいた。
「太川課長、良かったら私と食事に行きませんか?」
目の前に座る中原が大きな瞳をキュルンとさせながら聞いてくる。
「いま食べていますが……」
「そうじゃなくて今日の帰りに……」
「いえ、予定がありますので」
私が彼女の誘いを断ると今度は本郷が擦り寄ってくる。
「それじゃ私と明日、出かけませんか?」
「休日はやることがあるので、他の方とどうぞ。」
今までのようにそっとしておいて欲しい。あまり良くないが、定食をかき込むとトレイと食器を返却口に返しに行くために立ち上がった。
「あ、課長っ」
「お先に」
いつもよりかなり早く事務所に戻ると打ち合わせテーブルに人影を見つけた。
それは横澤さんだった。今日はいつもより体のラインが分かるワンピースを着ていて、すっかり痩せてしまったのは心配なのだが、逆に豊満なおっ……いや、決して胸が余計に目立つなんて不謹慎なことを考えてはいけない。
目の前の弁当に手を付けることなく考えこんでいる彼女の悩みはなんだろうか。私にその悩みを打ち明けてくれたら、精一杯解決のために協力するのに……
そう思って声を掛けた。
「何か悩み事ですか」
「ひっ」
私がいることに気づいていなかったのか?考えたくないが私が嫌いなのか?横澤さんは驚いたような変な声を出した。
「すみません。びっくりさせちゃいましたか?」
「か、か、か、課長っ、だ、大丈夫です」
絶対、大丈夫じゃないだろうと言う感じだが、ここで引いたらだめな気がして話を続ける。
「横澤さんはお弁当なんですね。どおりで最近社食で見かけないはずです」
「は、はい……」
とりあえずそう言ったものの、そのあとの会話が続かない。次の言葉を捻り出すまで100年くらい経ったような気分になる。たぶん実際は1、2分のことだろうけど……
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