約束 side裕哉

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約束 side裕哉

「課長、何か……」  こちらから話しかけたのに結局、言葉が続かず、横澤さんに気を使わせてしまった。 「あ、ごめん。食事の邪魔するつもりじゃなかったんだ。」   「い、いえ…… だい……じょ……ぶで……す」  とても大丈夫そうじゃない言い方ではあるが、もう押すしかない。   「あのさ……横澤さん、今日仕事終わったら食事に行かないか?」 「えっ……わ、私とですか⁉︎」 「あっ、嫌なら断ってくれていいんだ。その……仕事中はゆっくり話せないから仕事のこととかで悩みとか聞いて相談にのろうかって話で……ホント嫌なら断ってくれてもいいから」    意を決して言ったものの彼女の反応が今ひとつで、つい予防線を張るようなマネをしてしまう。 「あ、大丈夫……です……」 「やっぱりダメだよね……えっ⁉︎い、今、大丈夫って言った?」  一瞬、状況が飲み込めなかった。   「はい……よろしくお願いします」 「あ、こ、こちらこそ。終わったら店で待ち合わせにする?それともここから一緒……」 「あ、別々でお願いします」    さすがに私と会社から一緒に移動するなんて嫌なんだろう……だが、待ち合わせだろうが食事に行くことは了承してくれた。  踊り出したい気持ちを押さえ込み、友人から教えてもらった雰囲気の良い店の名前を伝える。 「それじゃ駅前のクランという店で待っているから」 「はい……」  平静を装い自席に戻って、時計を見ると昼休みがあと10分ほどで終わることに気付いた。  そろそろみんなが戻ってくる。午後はにやけないように気をつけて仕事をがんばろう。  
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