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「おい、委員会、行くぞ」
私を呼んだ彼は私の好きな人、海司だ。
今年、嬉しいことに委員会を一緒になれた。
けれど私の『莉里』という名前を呼んでくれない。
「はーい。椿は?」
そしてもうひとり、私たちと同じ学年の図書委員はいる。幼馴染で腐れ縁の椿だ。
図書委員は他の委員会より、人数が少なく、三人しかいない。
「あ〜。またサボりっぽいな。とりあえず先に行こ」
でも、委員会を時々サボる理由を私は知っている。
それは私が海司を好きなことを知っているから。
きっと気を使ってふたりきりにしてくれているのだろう。
「ーーーいや、あそこにいる」
私は椿の気遣いに感謝しているが、私のせいで先生に怒られるとなったら内申点も下がるし、なんだか悪い。
そもそも、くっつけようとしてくれてるのに、陰で見ているなんてちょっと悪ふざけのような気がする。
「お〜い。莉里、せっかくふたりきりにしてやったのに…」
椿は耳元でそう囁いた。けれど…私と海司が結ばれることなどないから無駄だと思う。
「…気遣いは嬉しいけど、海司と私が結ばれることなんて一瞬もないから、椿は気にしなくていいよ」
少し強めに言ってしまった。
「なんでそう思うん?」
「…私の名前を呼んでくれないから。いつも、『お前』って呼ばれる」
私は好きな人に名前で呼ばれたことがないーーー
「それはきっとはずかしんだって!」
そうだといいな。そんなわけないだろうけれど。
「…でも、でも」
「お似合いだよ!自信持てって!」
「はやく委員会行くよ!椿、海司!」
椿の言葉を遮るように私は叫んだ。
すると同時に海司に話しかけられた。
「…お前、色鉛筆持ってきた?」
また『お前』か。
名前を呼んでよ。
はっ。やばい。色鉛筆を忘れてしまった。
海司に恥ずかしいところを見られた。
「…教室に忘れちゃった!!」
どうしよう、どうしよう。
「…俺が貸してやるよ。お前、結構お茶目っていうかおっちょこちょいだな」
海司が貸してくれるって…嬉しい。
「おっちょこちょい!?からかってるん!?」
でも言いたいことと反対の言葉をいってしまった。
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