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『拝啓、遠山美希様。
いきなりのお手紙、びっくりしたことでしょう。でも僕は、今すぐにでもあなたの前から姿を消さなければいけません。僕は最低な男です。亡くなった親友の未亡人に近づき、取り返しのつかないことをしてしまいました。数年に及ぶ闘病生活の末、夫であった正行を失い、心身ともに疲労していたであろうあなたに迫り、一線を越えてしまった。その不徳と罪悪感に、僕は耐えられそうもありません。
僕は消えてしまう道を選びます。
卑怯だと罵ってもらって構いません。僕は下品な男です。
いつか、あなたは言っていましたね。実家がお店だと、就活もしなくていいし羨ましいと。悠々自適に暮らせそうだと。
私は消えます。残った店は、あなたに差し上げます。風呂やキッチンや寝室など、居住スペースも好きに使っていただいて構いません。古い店ですが、ご近所の方々にもごひいきにしていただいています。経営が初めてでもお金には困らないでしょう。
こんなことでしか償えなくて、ごめんなさい––』
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