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「へぇ、はるかにはにぃちゃんがふたりいるのか」
「そうだよ。うえのおにいちゃんがとうやっていってちゅうがくせいなの」
「うわ、おとなだな」
「そう、すごくとしがはなれているの。で、にばんめのおにいちゃんがなつきっていってさんねんせいなの」
「ふぅん……じゃあおなじがっこうにいるんだな」
「うん」
入学式以来、私と谷古宇くんはお互い『はるか』と『やこうくん』と呼び合っていた。
休み時間になると大抵のクラスメイトは校庭に遊びに行ったり教室の外に出て行ったりしていたけれど、私と谷古宇くんは隣同士の席に座って色んな話をして過ごしていた。
「ねぇ、やこうくんはきょうだいいるの?」
「あー……おれかぁ。いるっちゃいるけどいないっていったらいない……んかな」
「え? どういういみ?」
「……まぁいいじゃん、そんなはなしは」
「?」
その時の谷古宇くんの言葉の意味を知るのはもう少し私たちが仲良くなってからだった。
今思えばなんとなく谷古宇くんには色々秘密があるような気がした。子ども心にもそんな谷古宇くんはミステリアスな存在として私の中でどんどん大きくなって行った。
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