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──そんなある日
「ねぇ、矢上って子、いる?」
教室の入口で上級生らしい女子が三、四人、私の名前を言って探していた。
入口付近にいた子が私の方を指差すとその女子たちは中に入って来て私の席までやって来た。
「あんたが矢上さん?」
「そう、ですけど」
「え、本当に? あの冬哉くんの妹?」
「嘘でしょう? 全然似てないじゃん」
「……」
口々に吐き出される言葉に段々意味が解って来た。
「ねぇ、名前なんていうの?」
「……はるか」
「はるかちゃん、お兄さんって家でどんな感じなの?」
「彼女っているのかな」
「家に誰か連れてくることってある?」
矢継ぎ早にされる質問に思わず口を閉ざしてしまう。
「ねぇ、訊いてる? 教えてよ、冬哉くんのこと」
「妹なんでしょう? 知ってること教えてくれたっていいじゃない」
「……あの……わたし、おにいちゃんとはくち……きかないから」
「はぁ? 何それ」
「妹を嫌っているってこと?」
「あー可愛くないから口も利きたくないとかそういうこと?」
「……」
上級生の女子たちは自分勝手にどんどん話を進めて行って結局「役に立たねーの」なんて言いながら教室を出て行った。
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