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去って行った女子たちの勢いに唖然としていた隣の席の谷古宇くんが呆れたように言った。
「なんだよ、あれ」
「たぶん六ねんか五ねんせい。とうやにいちゃん、がっこうにいたときじどうかいのかいちょうとかやっていたからめだっていたんだとおもう」
「へぇーあたまいいんだ」
「ついでにカッコいいよ。うんどうもできるし。それはなつきにいちゃんもいっしょ」
「じゃあいまのってとりまきってやつ?」
「そうだとおもう。よくしらないこがいえのまえとかいたりして、こえかけられたりするから」
「なんかいろいろいってたな、はるかのこと」
「もうなれっこだよ。おにいちゃんたちにくらべてわたしはあたまもよくないしかわいくもないしうんどうもできないし」
「……」
「おにいちゃんたちとくらべられていつもいやなおもいするけどおかあさんもおとうさんもわたしのことかわいいっていってくれるし、それにおにいちゃんたちもわたしのこと、ばかにしないし」
「……」
「だからだいじょうぶ。ほかのひとになにいわれてもきにしない」
「……おまえ、つよいな」
「え」
谷古宇くんが少し表情を硬くして呟く。
「おれもさ、はるかのことかわいいとおもうぜ」
「……は?」
「あいきょうがあるっていうの? こころがきれいっていうの? とにかくおまえはかわいい」
「……」
その日、家族以外の人から初めて『可愛い』と言われてしまいなんとも不思議な気持ちになった私だった。
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