第一章 谷古宇くんと私

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その日、家に帰った私はお母さんに今日あったことを話した。 「へぇ、谷古宇くんって随分大人びいたことを言うのね」 「うん。なんかね、はるか、ドキッってしちゃった」 「あらあら、もしかして春花の初恋到来かしら」 「はつこい?」 「そう。春花は谷古宇くんのこと、好きになっちゃったんじゃないの?」 「すき?」 私が谷古宇くんのことを──好き? (……なのかな?) 思わず頭を左右に振りながら考えているとお母さんはクスクス笑いながら「まだ春花には早いかな」なんて言っていた。 確かに私は谷古宇くんのことが好きだ。一緒にいると楽しいし、お喋りをしするのは好きだ。 だけどその好きって他の友だちにも感じる好きという気持ちと一緒で──…… (でも『はつこい』ってそういうすきじゃないんだ……よね?) 好きにも種類があるのだとお母さんから訊いたことがあったけれど、その種類の違いが解らない私は胸を張って『うん、わたしはやこうくんがすき。やこうくんはわたしのはつこいのおとこのこだよ』とは言えなかった。 その時玄関から『ただいまー』と元気な声が聞こえて来た。ドカドカと足音を立てながらリビングに入って来たのは夏樹兄ちゃんだった。
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