タイムリープ

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「久しぶり」という言葉が、なんとなく嫌いだった。  だってその言葉を浴びせるときっていうのは、ぜんぜん会ってなかった相手と再び顔を合わせるときでしょ? つまりはそれくらいの間、あたしに会えなくてもその人は平気だったんだ……ってことになるじゃん。相手にとってのあたしが、本当に仲良しだったり、好きだったりする存在なら「久しぶり」っていう言葉を使わなくてもいい頻度で会いに行ったりするもんなんじゃないの?  そんなようなことを友達に話したら「それ彼氏に言ったら、自分以外の異性に会うなって言われるよりもずっと(束縛されてる)と思われるんじゃない?」と返ってきた。そうかな。本当に会いたければ距離なんていくらでも詰められるはずなのに。遠くに住んでるから会いに来られないだなんて言い訳「この時代になっても歩いて日本地図とか作ってんの?」って言いたくなるよ。  あの頃は若かった。  そう思うことこそ老化の始まりなのかもしれないが、今のあたしはこれ以外の言葉を見つけられない。会いたいけど会えない、別に会う必要なんかない、そんな感情の違いは置いておいても、大人になればなるほど身動きが取れなくなっていくものなのだと知ってしまったから。平日は学校に行って、休日は適当に遊んでいたあの時代とは違う。あたしの日常を守ってくれるのは親ではなく、今はあたし自身になったのだから。
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