或る男の狂想論

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或る男の狂想論

私は思うのであります。この世に生まれ落ちた意味などないという事を。私は役立たずであり、堕落した人間であります。根拠というものは、未だ自分を確立することができず、他人の指図なしには全く持って行動できない点であります。これは自分の人生を生きていると言えるのだろうか、と考えた時には時すでに遅く、本来主役であるはずの舞台から引き摺り落とされ、そこには他人が演劇をしているのであります。これは、私が生まれた意味が失われているという意味のほかなにを表すのでしょうか。さて、周囲を見渡しますと、果たして私のような人間が行さんみられるのであります。この国では労働が義務とされておりますが、大抵の人間はなんのために働いているのか、真の意義を見出せずにまるで機械の如く働いているのではないでしょうか。成程、金銭獲得目的で働く人々もおり、社会奉仕につながる事を夢見て健気に努力する人もいるでしょう。しかしそれは掘り起こせば、所詮は自己利益に帰すのであります。無性の活動程、虚しく、やりがいのないことはないのではないでしょうか。私がもうしたいことは、人間は皆、なんらかの利益を見込んで働いている、要はその仕事の真の意味を了解しているものはいない、もしくは一握りだけではないのでしょうか。
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