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「土井垣議員より祝辞を預かっていますので、読み上げます」
新人秘書か、インターン生なのか知らないが、そもそもそんな状態で私を同等に扱うこと自体ナンセンス……
「卒業生のみなさん、今日の門出をお祝い申し上げます」
「……なっ!?」
「そして保護者のみなさん、お子様のご卒業誠におめでとうございます」
なんだこいつは……!? 先ほどまでのありふれた青年の声から、なんという変貌ぶり!何をそんなに気合入れて読んでいるんだ!? 自分の文章じゃなくて、代議士の文章だぞ!? もっとメッセンジャーとして……そうか!
「思い起こされるのは、57年前。桜の花びらが舞う中、学友たちと共に歌った最後の校歌。私が卒業の日を迎えて時のことです」
これは……土井垣代議士だ! 土井垣代議士を、その場で再現しているんだ! 本人が書いた言葉なんていう次元じゃない、こいつは、本人の幻影そのものをこの卒業式に召喚しようとしている……!
「頑張れ、若人たちよ。未来は、きっと明るい!」
依田……! なんだこいつは……全てにおいて私を圧倒してくる! 拍手を受けて帰ってくる彼の姿、それすらも土井垣代議士のままであった。
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