代読と呼ばれた男

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「あなたに出来ますか?」  隣から声がした。依田だ。依田がこちらに向かって話しかけている。 「メッセンジャーは本人と表裏一体。時にはその境界線すら破壊し、本人のパーソナリティと交わる。文字だけを追っているあなたに、そこまでのことができますか?」 「何を、言って……?」 「あなたは言葉で鶴川市長になったつもりでいるかもしれないが、僕は違う。発声、呼吸、間の取り方、表現、思想、全てにおいて土井垣先生となる。そして最後は、僕が本人となる。僕こそが、土井垣清治となるのだ……!」  そうか。そういうことだったのか。あの笑みは、私もとい同類を見つけたことに安心したのではない。私の代読を見て、自分を超えることはないと確信した、勝利宣言……!  そしてこいつはさらなる高みに行こうとしている。強大な野望を掲げて……!
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