据え膳食わぬワン!

12/13
前へ
/13ページ
次へ
 一瞬の痛みにぎゅっと目をつむる蘭子さま。なんだかとてつもなく悪いことをしているような気持ちになる。背徳の味だ。 「……これで、大牙くんは大丈夫だね」  蘭子さまは安心したようにやわらかく笑う。安心したのは俺の方だ。じいちゃんは満足したのか、頷きながら去っていった。 「大牙くん、私たち、これからどうする?」 「どうするって……もちろん――」  俺が蘭子さまに近づいたきっかけは、もう関係ない。俺はもうどう生きるか決めたんだ。蘭子さまの前でひざまづく。  「蘭子さまに服従します」 「……じゃあ、命令。前みたいに普通に接して。これからもっともっと私のことを好きにさせてあげるから、私のことを好きになって」 「……わかった」 「あと、蘭子って呼んで」 「……蘭子」 「よろしい」  蘭子さま――蘭子は、笑う。俺だけに見せる、とびきりの笑顔だ。  俺は蘭子に服従したい。俺は蘭子の犬になりたい。  俺は蘭子のことを、これからもっと好きになる。  俺たちの主従関係は、まだ始まったばかりだ。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加