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「……え……」
「大牙くんが何を背負っているのか知らない。でも私は、大牙くんが大好きだから。他に何もいらないし。だから、死んであげてもいいよ」
予想外の展開に、俺の思考が追いつかない。なんだこれ? もしかして大チャンスなんじゃないか。俺の脳内でイマジナリーチャラ兄が親指立ててドヤ顔してる。本当になっちゃったよ、この展開。
でも、俺は。据え膳食わぬはなんとやら。目の前にすべてを差し出した獲物がいるというのに。獣のはずの俺は、それを食うことができない。自分の本当の気持ちがわかってしまったから。
「ごめん、それはできない」
「……なんで?」
美園蘭子はおもむろに立ち上がり、俺を文字通り見下す。
「いくじなし」
ゾクゾクする。そうだ、この感覚、この感情。どうしようもなく涌き出る、欲。だから俺は、美園蘭子を食うなんてとてもできない。
伝えたい。伝えなきゃならない。
「美園蘭子!」
美園蘭子は目を丸くして俺を見る。
「俺はあなたに――」
美園蘭子は期待した目で俺を見る。
「服従したい!!!!」
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