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「……は?」
俺は気づいた。気づいてしまったんだ。俺の本能に。俺の、犬としての服従欲に!
美園蘭子の、冷たい視線、冷たい態度、いわばムチ。美園蘭子の、甘やかした囁き、あたたかい手のひら、最高の撫で方、いわばアメ。もう最高だった。どうしようもできないほど、俺は美園蘭子に服従したい。
「俺はあなたの犬になる! 俺は犬として生きるんだ!」
美園蘭子、いや、蘭子さまは混乱した様子で首をかしげる。初めて見るお姿も麗しい!
「俺は人狼で、あなたを食おうとしてた。でもやっぱり俺は狼なんかじゃない。犬なんだ。どうしようもなく犬なんです! だから俺を飼ってください!」
「……え? いや、うーん、えっと……まあ……一緒にいてくれるならなんでもいい……かも……? いいのかな……?」
「ありがとうございます! 敬服いたします!」
俺が蘭子さまと主従を結んだ瞬間のひととき、それは人々の喧騒からも離れた素晴らしい時間だった。それなのに、そこに聞き慣れた怒鳴り声が響く。
「大牙ぁぁああ! 見ておったぞ! 犬として生きるだと!? なんだその腑抜けた姿は!」
「うわっ、じいちゃん……」
木の陰から現れたのは、杖を振り回すじいちゃんだった。てか、いつから見てたんだよ。大方、蘭子さまの美貌に見とれてたんだろエロジジイ。
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