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旅先の観光案内所でもらったパンフレット。
土地の名所や名物を扱う店が載っていて、ありがたく活用させてもらっていたのだが、それに従って歩いていたら、次第に店も何もない辺りに来てしまった。
この、何もない通りも、この辺りの名所の一つなのかな。
今でこそさびれているけれど、歴史的な価値がある場所とかかもしれない。
あるいは、道の両脇に等間隔に木が植えられているから、花の時期ならば壮観な眺め、とかだろうか。
色んな事を考えながら歩いていたら、ふいに前方の並木が揺れた。
生い茂った枝の中から何かが降りてくる。その、人と獣が混ざり合ったような何かと目が合った。
そう思った次の瞬間、目の前が真っ暗になった。
* * *
「あ、そこのパンフレット、新しいのと入れ替えていてくれるかな」
「はい。…こっちのはもういいんですか?」
「ああ。先日それを手にした観光客が、『例の道』に向かってくれたからね。見張りの話では、並木に向かった後、戻ってこなかったらしいから、もう『あの道』を掲載したパンフレットは用済みだよ」
「じゃあ来年まで、人目につかないよう、厳重に保管しておきますね」
観光パンフレット…完
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