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「そこでさ、俺良いこと思いついちゃったんだけど。
俺が陛下の代わりに妹を帝国から助けてきてやるから、そのために俺を鍛えるっていうのはどうよ?」
あながち悪くない意見だ、とネロは思った。アアルと神竜帝国は同盟国であり、表立って敵対することはできない。かといって帝国からアアルに出された条件も到底飲めるものではない。しかし同盟軍のリュウセイとヴィザールの二人を育成し、代わりに彼らに妹を救出させればお互いの利害が一致しWin-Winである。
「リュウセイさん、約束というのは口でするものではない。互いに何かを賭けて初めて成立するものだ。君は何を賭けるのかね?」
「命を賭ける」
「面白い。乗った!」
リュウセイの話を聞き、ネロは先ほどの会談のための部屋へと戻った。
そしてそこで帝国の使者に対して
「妹が皇帝陛下に対して不敬な態度をとってしまったことはお詫びしよう。だが貴国から我が国に出された条件は到底飲めるものではない」と帝国からの要求を頑なに拒否した。
この解答に帝国の使者は目が点になった。ネロの最愛の妹を幽閉までしたのにネロは帝国の要求を一切聞かなかったからだ。彼女の命を天秤にかけ、半ば強制的に要求を飲ませることも考えたが、そこまでした場合完全に敵対関係に陥ってしまうリスクが高い。
アアルは帝国にとっても重要な同盟国であり、戦争を継続する上でも重要な支援国である。それを敵に回すのは帝国からしても避けたいことだった。しかし帝国は判断を誤った。妹を脅しに使った行動は逆にネロを怒らせ、同盟軍の優秀な兵士が育成されるきっかけを作ってしまったからだ。
ネロは帝国の使者を丁重に追い返すと甲板に出て星空を見上げた。そして拳を握り締めつぶやいた。
「ラリサ、すまないがもうしばらく待っていてくれ。お兄ちゃんが助けに行ってやるからな…」
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