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「 冬に撮影なんて絶対にあり得ない!風邪引いたら如何責任取ってくれるんだろう! 」
「 声のボリューム抑えて、気持ちは分かる。俺だって君を長時間海に浸けたくはないんだ 」
付き合って一年記念に、
自分達で揚げる事のできる揚げ物屋で、ビール片手に話してるのは如何かと思うけど、私が揚げ物が大好きなのだから仕方無い。
綺麗とか可愛いとか、そんなの見た目だけって自覚があるぐらいおっさんみたいな物が好きなんだ。
「 本当…かなかなが何度か止めなければ、私は風邪をひいてたね 」
カメラマンは本当に鳥肌が目立ってきたり、唇や肌の色が悪くならない限り止めないから、叶人が止めてくれなきゃ死んでたと思う。
目の前にある油へと、鶉のゆで卵が刺さった串を入れて、其れが狐色に染まるのを眺める。
「 そんな事はさせないさ。君の体調管理も俺の役目だ 」
「 でも、かなかなが…病気になったらダメなんだよ?ほら、あーん 」
「 なりはしないさ……。あー… 」
上手く揚げれた串に、少し息を吹きかけて冷ましてから彼の口元へと運べば、一つ軽く噛んでから咥内へと入れて、何気に熱がったのを見て笑う。
「 あつっ……ん、ふっ…… 」
「 ふふ、前にもよく食べさせてたよね……。ん?食べさせてたっけ? 」
不意に口走った内容に、頭の中に霧がかかり、
僅かに誰かにこうして食べさせてたのを思い出したけれど、それが叶人であったのかが悩む。
「 あったじゃないですか。楽屋で嫌いな人参が入ってた時に、俺の口に突っ込んできたり 」
「 あー、あったね!好き嫌いなくて全部食べてくれるから、助かるよ 」
「 おままごとじゃ無いんだ。なんでも食べさせようとしないでくれ 」
「 ははっ、もうそんな子供っぽいことしないよ…( もう……?あ、そうか…私、昔よくおままごとしてた…。でも、その時、誰かがいたはず… )」
子供の頃にしたおままごと、その時に一緒に遊んでいた友達がいた気がして、
少し傾げていれば咥内の熱を取り逃がすように、ビールジョッキを軽く傾けて呑んでる彼の手首の裾が下がった。
「 かなかな、その左手首…どうしたの?」
「 ん?あぁ、これ…重い機材を運ぶのに手伝わされた時に怪我してな。それでだ… 」
見せないようにそっと包帯を隠した彼をじっと見詰めては、他の串を揚げていく。
「 そう…前にも怪我してたし、余り無茶しないでね。図体は大きいのに変なところでドジだからさ 」
「 …そんな事は、ないと思うが…気をつける 」
「 うん…かなかなが、怪我したら…嫌だから 」
残る傷なら尚更嫌だなって思っていれば、彼は少し目を見開いた後に優し気に笑った。
「 ありがとう、愛紗はいつも優しいよな。そう言うところ、好きだよ 」
「 っ…今、そう言うのいいから食べちゃお 」
「 照れてる。ふふ可愛い… 」
散々、日頃から色んな人から言われるけれど…
やっぱり叶人に言われる時が一番嬉しいし、胸が跳ねる。
お腹いっぱいにご飯とお酒を摂取すれば、ほんのりと酔って彼が日頃使う車で、自宅のマンションへと行く。
荷物を運んでくれるフリをして、一緒にセキュリティーがしっかり管理されたエントランスに入ってから、エレベーターで自分の階に上がる。
42階のボタンを押し、玄関の鍵を虹彩認証で開けて中へと入る。
「 ただいま 」
「 おかえりなさい 」
背後から聞こえてきた声と共に、玄関の扉を閉まり、くるっと向きを変えると同時に抱き着く。
「 かな…おかえり、ん… 」
「 あぁ…ただいま 」
暮らしてる場所は違えど、部屋に入れば恋人同時。
靴を脱ぐよりも先に抱き付けば、軽く抱っこした彼は口付けを交わし、片腕で私の太腿を支えれば反対の手でブーツを外し玄関へと落とす。
身長差がある為に、抱っこされたまま何度も唇を重ね、彼のカスタードクリーム色の髪へと指を絡めていれば、舌先は咥内へと入りそのまま擦り合わせる。
「 んっ…ん…… 」
「 ン………… 」
少し酒の香る咥内と舌先に、甘く溶けるような思考になり始めれば、彼は舌先を解き舌なめずりした後に頬へと口付けを落とす。
「 お風呂は? 」
「 あと…… 」
「 ん……分かった 」
抱き上げたまま自らの靴を脱ぎ、揃える事無く反対の手で鞄を持ち、リビングに入る事無く寝室へと行けば、優しくベッドへと押し倒してくる。
「 愛してる、愛紗 」
「 ふふ…私も、大好き…。愛してる…叶人 」
見詰め合っては口付けを交わすと、叶人は着ていたコートを脱ぎ、スーツのネクタイを緩ませては、身体を起こす。
「 流石に、暖房つける。寒い 」
「 かながあっためてくれたらいい 」
「 ったく……。せっかちだな 」
そう言う割には何処か嬉しそうに笑っては、身体を乗せて来た為に、白いシャツを着た背中へと腕を回しては、口付けを交わす。
「 ん……ふ、ん…… 」
「 はぁ、愛紗… 」
冷えた部屋が気にならない程に、熱く火照る身体を求めるようにお互いの指を絡めながら、行為へと呑み込まれる。
優しく抱き締められて、熱いものが中へと入り、奥を刺激する感覚に上擦って甘い声が漏れて。
それでも離さないように手を握る
彼の甘い独占欲が心地良い。
「 ぁ、あっ……!んっ、ぁ、かな、ぁ、ッ! 」
「 ふ、はっ…… 」
何度も揺すられる度に締め付けて、重なる唇から吐息を吐いて、お互いに絶頂を迎える。
「 んんッ〜……かな……大好き…はぁ、ァ…ん… 」
「 俺も大好きだよ、愛紗 」
彼の首や腕にある僅かに解けた包帯から見えた身体には、密かに亀裂のような傷があった。
それに指を滑らせれば、誤魔化すように再度唇は重なり、奥を突き上げられる。
日付が変わるまで行われた行為に、只酔いしれた。
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