がんばれ!リョーコ

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 アサミと並んで野菜を切り終えた。途中だった玉ねぎは最後まで私が切った。涙はまたあふれてきたけれど、泣きつくしたかのように頭はぼーっとしていて、目がツンとするとか、そういうことはなかった。 「そっか、ユウタくんには好きな人がいたんだ」 「だれだろうね。だれでも良いけど」  私はカレー鍋を火にかけて油を垂らした。豚肉を炒めていく。 「でも、リョーコは偉いよ。ちゃんと告白したんだから。告白して、フラれたけど、思いを告げられたのは良かったんだよ」  アサミの言葉に小さく「うん」と答えながら、私は鍋に玉ねぎと人参も加えた。ただ、ひたすらに炒めていく。火の前に立っていて、体が熱い。 「リョーコ。代わるよ」 「あ……うん」  私は木べらをアサミに渡して一歩うしろに下がった。アサミは一定のリズムで鍋の具を炒めている。 「アタシはさ、あんまり恋とかわかんないけど。結局つらいのは、一番つらいのはフラれた今なんだよ。喉元過ぎれば熱さを忘れるって、良い表現じゃないかもしれないけど、でも時間が経てば今日の痛みやつらさは忘れるし、きっとまた恋ができるよ」  その言葉に、私はただ「うん」とうなずくことしかできなかった。  できあがったカレーは、すこし甘かった。  アサミが隠し味を加えたのか、それとも炒めた玉ねぎの甘さだったのか、わからない。
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