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底冷えのする現実。民主主義在りと高を括れど、孤立するは我が信念故か。けたたましい轟音がした。「待ち侘びたぞ。メッセンジャー。私はパワーマン。さぁ…導いてくれ。」立ち込める粉塵の最中にヒーローが居る。パワーマンだ。俺はパワーマンの無実の罪を晴らさないといけない。「ぱ…パワーマンは遠森魚正から、次元の剣を継承したんだな。そうか…。」俺は理解した。抜け落ちていたパズルのその一片が揃ったみたく、俺は嬉しくなっていた。「違うな…。レフィルか。人斬り抜刀斎に情けを掛けられる筋合いはない。この次元の剣は一振りで多くの人を救うことが可能だ。つまり、正義の剣だろ?夜霧を早く手放すんだ…。」パワーマンは俺を知っている。些か困惑している様子で、俺も戸惑っていた。虹色に光り輝く、巨躯で骨肉隆々の肉体、タイツを纏っているかの様だった。恐らく不完全な状態なんだろう。胸の真ん中には“The Power Man”とあしらわれていた。真っ赤なブーツとマントが虹色の肉体を抑えていた。「パワーマン…では、遠森魚正はいつどのように死んだんだ?」俺は意を決し、問うた。「魚正はこの私を素人と呼ぶ唯一の男。次元の剣は私を意図して打ち付けた剣と言うから、私は気味が悪くなり、魚正に爆撃拳を食らわせたんだ。…魚正は悪。私は正義だ。」パワーマンの目はくすみ、俺は幻滅していた。「この夜霧で貴様を叩き斬りたいものだが、妖刀がそれを許さない様だ。」闇に住む妖刀、夜霧が朝露にさえ思える状況…。「あっははっ!待て待て…レフィル。夜霧であの次元の剣を見るな…。あの剣は魔法の杖でしかない。」フィリトが怒っていた。パワーマンの発言に怒っていたのだ。「魚正は砕け散った。私の爆撃拳は確かに身を砕くが、魚正とて例外ではなかった。フィリトよ。私の仲間に為らないか?」パワーマンはフィリトを勧誘し出した。俺と比べれば、確かにフィリトの方が見込みはあるからな。「パワーマン!勘違いするな…。お前は仇ぞ!」涙を流し、パワーマンを直視するフィリトは茫然自失であった。
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