<1・懺悔。>

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<1・懺悔。>

 もしも世界が終わるとしたら、それはどのような原因によるものだろうか。  戦争によって人々が殺し合うのか?  あるいは火山の噴火によって焼き尽くされるのか?  はたまた環境汚染によって病気が蔓延し、ゆるやかに滅んでいくのか?  これを読んでいる貴方にもきっと色々な想定ができることだろう。実際、科学者である我々も様々な予想を立ててきたものだ。  此処が終焉が約束された世界だったのならば。  その約束された終焉は、果たしてどのようにして訪れうるものなのか?と。  だが、我々は誰も予想していなかった。  そうだ、少し冷静になって予測を立てれば十分考えられたことであったはずで、なのに世界的に有名な大学を出た我々が誰一人この有様を予想できなかったのである。なんとも間抜けな話ではないか。  この手紙を読んでいる貴方がいかような存在かは知らない。この滅びゆく世界にて僅かに生き残った人類か、はたまたロボットか、もしくはこの惑星に訪れた異星人なのか。  その貴方に、この世界の終焉を止める方法があるとは思っていない。これはきっと我らの業で、それを受け止めるのもまた自業自得だとは考えている。  だから、これはあくまで、そんな私の身勝手な――小さな小さな希望の過ぎないのだ。ああ、これも業だと言われたならば否定できない。  ただ、我々の世界に何が起きてこんなことになってしまったのか、誰か一人でも知っておいてほしいのである。  同時に、願わくば真実を解明し――同じ悲劇を、どうか繰り返さないでほしい。  それだけが、愚かな私の、最期の望みである。
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