3人が本棚に入れています
本棚に追加
「アンドロイドなんて大企業の人件費削減以外にメリットないのよ」
「すぐそういうこと言う! 夢がない! イケメン型とデートしたいじゃん!」
千春はびしっと道行く女性を指差した。女性は男性と手を組んでいるが、それはアンドロイドだった。
見目の整っているアンドロイドは少ない。どれもこれも歩くマネキンで、いかにも作り物だ。
それでも連れ歩く人は少なくない。これはイケメンだからというよりも、自らが富裕層であるというステータス自慢のようなものだ。
「指差さない。てかデートは彼氏としなさいよ」
「あ、さては私を取られて寂しいんだな⁉ 大丈夫。千夏が一番大事だから♪」
「はいはいありがと。けど本当に買い替えるの? 大して変わらないじゃない、スマホなんて」
「三代も前のを使う千夏には分からないでしょうね。あ! パフェ食べたい!」
千春はアンドロイドどころか目的だったスマホのことすら忘れて通りの向かい側にあるカフェを指差した。
全く。移り気なんだから。
この子はいつもこういう感じだ。気分で周りを振り回すから彼氏は千春とのショッピングが面倒らしい。
けどこれがこの子の可愛いところでもある。双子ながら私とは全く逆だ。
いつものように千春は私の手を引いて走り出した。
「分かった分かった。分かったから前見て――きゃああ!」
その時、何かが凄い速度で通り過ぎた。
キィィという耳をつんざくような音と同時に視界が真っ黒になり、多くの人の悲鳴が聞こえてきた。
最初のコメントを投稿しよう!