3人が本棚に入れています
本棚に追加
「きゃあ!」
私は固い物に殴りつけられたのか、バンッと突き飛ばされる音と同時に背に激しい痛みが走る。
痺れたような身体を無理矢理起こすと、ショーウィンドウに叩きつけられていた事をようやく理解した。
周りでも何人もが同じように転がっていて、中には服がべっとりと血に染まってる人もいる。
「……何よこれ。千春。大丈夫? あれ?」
千春の手を握ろうと思ったけれど、繋いでいたはずの手には誰の手もなかった。
私はきょろきょろと周囲を見回したけれど見当たらず、痛む足を引きずりよろよろと立ち上がった。転がっている人の中に千春の姿は無い。
「千春? 千春!」
こんな状況で千春が私を探さないわけがない。周りにはぐったりとして動かない人もいて、さあっと血の気が引いた。
私は足の痛みを振り切って千春を探した。
声を出せないような怪我だったらどうしよう。歩けないなんてことないわよね。
私は必至に千春を探し、ふと気が付いた。
大勢の人が輪を作っていた。野次馬が見守るのは横転しているバイクで、そのバイクの傍に二人の人間が転がっている。
一人は運転していたであろうヘルメットをかぶった男だった。
起き上がろうとしているけれど、バイクの下敷きになっているので地に這いつくばるだけだ。
もう一人は少女だった。私と同じくらいの少女だ。でもおかしい。
少女は千春と同じ服を着ているのだ。
「……え?」
血だまりができていた。手足があらぬ方向へ曲がりぴくりとも動かない。
呼吸すれば上下するはずの胸は全く動いていない。
何? あれは何?
この辺りには家電量販店がいっぱいある。アンドロイドの安売りだってやってる。きっとアンドロイドと二人乗りでもしてたんだ。そうに決まってる。
私はずるずると足を引きずり少女の傍に膝を付いてそっと手を伸ばした。
するとコツンと何かが転がり落ちた。千春が買い替える予定のスマートフォンだ。
少女の顔は長い髪が絡まりよく見えない。
私は髪をかき分けその顔を確かめた。
現れたのは、私とそっくりな顔だった。
「千春!」
千春は動かなかった。
醜くひしゃげた体はまるで壊れたアンドロイドのようだった。
最初のコメントを投稿しよう!