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私はその雑誌を奪い食い入るように見た。
そこには『一人で行きたい隠れ家カフェ』というタイトルの特集で、トップを飾っているのは二人の青年のグラビアだった。
一人は赤毛でもう一人は黒髪だったが、双子なのだろう、同じ顔をしている。
二十代前半に見えるがべったりと抱き合っている姿は幼い子供のようだった。
特に赤毛の青年はカメラ無視で黒髪の青年を見つめていて、幸せそうに微笑む様子は相当可愛がっているのであろう事が伝わってくる。
カフェのメニューはショートケーキワンカットの小さな写真がお情けばかりに載っているだけで、売りはメニューではなくこの青年達だというのは一目瞭然だった。
だがそんなことはどうでもいい。問題はこのタイトルだ。
「死者が生き返る店……」
「ひ、日南さん。どうしたの」
「イケメン好きだっけ? あ、カフェ巡りとか?」
クラスメイトの言葉は右から左へ流してページを捲る。
ひたすら二人のグラビアが続いていて、カフェで接客してる様子や動物とじゃれ合う無邪気なショットが並んでいるばかりだ。
しかし一つのインタビュータイトルに私の手は止まった。
「死んだ弟を蘇らせた兄……?」
それはどう見ても仲睦まじい兄弟だったが、どのショットにも『あの日二人でやりたかったこと』という解説が付いている。
何? 生き返らせて生前やりたかったことを今やってるってこと?
意味が分からなかった。いくらインタビューを読んでもその意味については書いていない。
千春が死んで以来、初めて私は大声を上げた。
「この雑誌貸して!」
「あ、ああ、う」
クラスメイトが返事をする前に雑誌を握り、私は鞄を抱えて走り出した。
途中で先生が戻りなさいと叫んでいるのが聴こえた。
でも私は全力で走り電車へ飛び乗り、カフェの住所へ向かった。
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