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そして辿り着いたカフェがここだ。
カフェの前に咲き誇る季節外れのソメイヨシノは、死んでもなお生きることを許された可能性を感じさせる。
思い切ってカフェの敷地へ足を踏み入れると、タイミングよく店内から二人の青年が出てきた。
雑誌に載ってた双子!
二人は同じ顔をしているけれど、赤毛の青年は白いシャツに赤い腰巻のロングエプロンで、黒髪の青年はお揃いの制服で青いエプロンを付けている。
しかし気になったのは服装より持ち物だ。
黒髪の青年は手ぶらだが、赤毛の青年は額縁に入った写真を両手で抱えていた。
遺影? ううん、おかしいわ。だってその人はそこにいる。
写真は今隣に立っている黒髪の青年だ。
その時、ふと私の脳裏に雑誌のキャッチコピーが脳内をよぎった。
死んだ弟を蘇らせた兄……
赤毛の青年は写真の黒髪の青年にソメイヨシノを見せようとしているのか、額縁を高く掲げている。
写真と全く同じ顔をした黒髪の青年も嬉しそうににこにこと微笑んでいた。
私の脚はふらりと二人に近付いて行った。
すると、ふいに黒髪の青年が私に気付いて視線がぶつかった。
くいくいっと赤毛の青年の袖を引っ張ると、赤毛の青年も私を振り向いた。
そして少し驚いたような顔をしてからクスリと笑う。
「君も生き返らせたい人がいるのかな」
強いビル風が吹いた。
青年達の髪が風を象りながら乱れたがソメイヨシノの花弁は落ちてこない。
このソメイヨシノは生きているのだろうか。
生きているものとは違う状態になってしまったことを死とするのならこの木は死んでいるのかもしいれない。
「おいで」
青年達は微笑んで手を差し伸べてくれた。
美しいその微笑みはどこか作り物めいている。
そして私はその手を取った。
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