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プロローグ
太陽の照り付ける九月上旬。
私、日南千夏は双子の妹の千春と二人で家電量販店へ向かっていた。スマホの新機種が出たから調査しに行こうと言っていたのだけど、新しい物好きの千春はショーウィンドウで安売りされている商品に食いついていた。
「アンドロイド! 欲しい!」
「今さら?」
アンドロイドが一般家庭に流通したのは百年ほど前だ。
最先端モバイル端末はスマートフォンからアンドロイドになるだろうと言われたけれど、そのブームはほんの数年で過ぎ去った。
理由はいくつかあるが一つは費用面だ。安くても一機三百万円前後で、目や髪などのカスタマイズオプションを付けるだけで五百万円はゆうに超える。
「大体何するのよ。機能なんてスマホと同じじゃない」
「歩けるじゃない!」
「けどそれって」
千春がガッツポーズをして訴えてきたが、その時、向かい側のビルの上に付いているハイビジョンからタレントが議論している様子が流れてきた。
『先月はアンドロイドを使ったストーカー犯罪が二十七件もあったんですね』
『バイク二人乗りで大事故もあったでしょ。あれヤバいよね』
『勝手に歩けるってのは考え物ですね。セキュリティ解除しちゃうとか』
『あー。個人情報漏洩系も多いよねえ』
アンドロイドはそれなりに問題がある。
独立行動が魅力だが、人の手を離れたことで発生するエラーが手に負えない状況になったのだ。
違法カスタマイズも無くならないのでメーカーがどう頑張っても犯罪に終わりがない。
「ですってよ、千春サン」
「ぐぬ~……」
「歩くだけなら動物型ロボットのがいいよ。可愛いし」
総括して、アンドロイドはいうほど充実した端末ではなかった。
機能はほぼスマートフォンのくせに充電の電気代は高いわメンテナンス費用だってかかる。
トータルの費用を考えるとモバイル端末としてはスマートフォン以下だった。
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