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初めて担当した時、深結のふわふわの髪に理玖は衝撃を受けた。
細くて柔らかい、色素の薄い茶色の髪はしっとりと艶めいて理玖の指に絡んだ。
そして深結は髪を触られると気持ち良くなって寝てしまうのだ。
初めて来た店で理玖にシャンプーされながら気持ち良さそうに眠る深結にまた驚かされた。
なんて無防備なんだろうと。
その白く小さい顔や形のいい唇にドキドキした。
この子の髪は絶対に他の同僚に触らせたくない。
そう思って猛烈にプッシュした。
絶対にまた来てほしい。
そして絶対に自分を指名してほしい。
そう熱く語る理玖に深結は柔らかく笑った。
ーーじゃあ、名刺ください。
理玖は勢い余って種類の違う3枚の名刺を深結の手に握らせた。
そのうちの一枚に自分のスマホの番号を書いておくことも忘れなかった。
理玖の美容師人生で客にそんなことをしたのはその一度きりだ。
「私は〜やっぱり恋人と過ごすクリスマスは夢の国とか、ホテルのスイートルームとか、真っ赤な薔薇100本とかが憧れで〜」
客の話に相槌を打ちながら、理玖は別のことを考えていた。
ーー今日の深結の晩ごはん何かなクイズ〜
昨日は肉じゃがだったから、今日は……
魚かな。
パスタかな。
あ、唐揚げとかだったら最高。
まぁ深結のごはん何でも美味いけど。
何でも好きだけど。
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