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理玖が外の寒さに震えながら自転車でアパートに帰ると、2階の自分たちの部屋には暖かい明かりが灯り、換気扇からもの凄くいい匂いが漏れ出していた。
理玖は階段を駆け上がり、玄関チャイムを鳴らした。
「はーい、おかえり」
深結が中からドアを開けるとそのいい匂いが洪水のように外に向けて放出された。
「ただいま。なに、この殺人的ないい匂いは……」
理玖はそう言って早々に靴を脱ぎ、玄関を入ってすぐのキッチンに向かう。
「あー!鍋焼きうどん!」
理玖は目を輝かせて深結を見た。
「うん。今日一段と冷えるから、あったかいものがいいかなと思って」
「うわ、そうきたか。全然思いつかなかったわ」
理玖は出汁のいい匂いに鼻をくんくんさせた。
「あとねー、商店街の肉屋さんが安くしてくれるっていうからこれも」
そう言って深結はビニール袋に入った唐揚げをゆらゆらさせて笑った。
「…………」
「理玖?」
理玖は下を向いて肩を震わせた。
「ヤバい……今日めちゃめちゃ豪華メシじゃん」
「そうなのよ」
「もうサンタ来た?早くね?」
深結はふふっと笑ってコンロの前に戻る。
「もうできるから手洗っておいで」
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