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そして手短に、食パンにマーガリンを塗り、とろけるスライスチーズを一枚乗せてトースターに放り込む。
パンを焼く間にインスタントのドリップコーヒーをマグカップにセットしてお湯を注ぎ、2人分のコーヒーを用意して、焼き上がったパンにホットケーキシロップをかけた。
それからようやくまだそこで揺ら揺らしている理玖に声をかけた。
「ねぼすけ太郎、パン焼けたよ」
小さなテレビで情報番組を見ながらゆっくりパンとコーヒーの食事をする。
それがいつもの休日だ。
理玖は半分目をつぶったままで、もそもそとパンを食べていたが、3口目に突然目を開いた。
「なにコレ、甘じょっぱくて目ぇ覚める」
「おはよ理玖」
「おはよう深結。これめちゃめちゃ美味いな」
ショボショボした目で揺ら揺らしていた時とは別人のように、切れ長の大きな黒い目でこちらを見て来る理玖は超絶イケメンなのだった。
壮絶な寝癖以外は。
寝ぼけて可愛い感じの時と、起きている時の少し怖そうに見えるほどの端正な顔。
そのギャップをジキルとハイドと深結は呼んでいる。
理玖はウェーブがかった癖毛が逆立つのが悩みで、自分の髪をなんとかしたくて美容師を目指したのだと言う。
「すぐできるからおかわりどうぞ」
深結がそう言うと理玖は嬉しそうに頷いた。
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