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水着姿の咲耶
先日、忍ばない甲賀忍者、咲耶がボクの屋敷へ道場破りとして現われた。
ボクの事を宿命のライバル『伊賀の影丸』だと勘違いしたらしい。
間違わないでほしいが、ボクの名前は伊賀野藤丸だ。
確かに姓名は伊賀野だが、伊賀忍者とはなんの関わり合いもない。
伊賀忍者の子孫でも末裔でもないのだ。
さらにその咲耶は、どさくさに紛れてボクの担当する私立魔界野学園六年Z組へ編入することになった。
今日は夏休み前、最後の授業だ。明日は終業式なので授業はない。
二時間目の授業は社会科の時間だ。
しかし教室内は騒然としていた。ボクも茫然として窓際を見つめた。
なぜか、教室内は陽気なサンバのリズムが奏でられていた。普段ならウキウキして楽しい気分だろう。しかしあいにく今は授業中だ。
窓からは突き刺すような真夏の日差しが降り注いでいた。
ただでさえあとわずかで夏休みに入るのでクラスメイトたちも浮足立って授業に身が入らない。
だがそれにも増して、窓際には異様な光景が広がっていた。
教室の窓際でカラフルなビーチパラソルを開き、折り畳み式のサマーベッドの上に長い美脚を投げ出した美少女が横たわっていた。
香水だろうか、辺り一面、甘美で蠱惑的な匂いが漂っていた。
しかも彼女は極彩色で艶やかな水着姿だ。まるでプールサイドで寛ぐハリウッドのセレブ女優のようにたおやかだ。
さながらバカンスを楽しんでいるみたいに優雅にサマーベッドへ寝転んでいた。男子生徒たちは目をまん丸にして美少女の水着姿を見つめていた。どこか上の空だ。
美少女の名前は咲耶。忍ばない甲賀の女忍者だ。
「♪フッフフフゥン♪」
咲耶はサンバに合わせて鼻歌を歌っていた。全身でリズムを取ってノッているようだ。
さらに片手で自撮り棒を操り、自らの水着姿を撮っていた。ピースサインをしてごきげんな様子だ。
とてもではないが社会科の授業中とは思えない。
「ザワザワ……」
あまりにも突飛な行動にクラスメイトらも腫れ物に触るようだ。
時折り咲耶は、グラスに入ったオレンジジュースをストローを使ってノドを潤していた。
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