37人が本棚に入れています
本棚に追加
僕にも感じる。なにか嬉しそうな、懐かしそうな、そんな空気があたりを包んでいる。ビスケはなにかを追いかけているように走り回っている。なぜかキャラも一緒に。美羽ちゃんのお父さん、お母さんも先ほどとは違って笑顔を浮かべている。
美羽ちゃんの家をあとにし、まっすぐ家に帰れるかと思いきや、いつも通りあっちこっちに寄り道しながらキャラは歩いていく。
「檀ちゃん、ジャーキーちょうだい」
「キャラ、お腹すいたの?」
「いいから、早く」
キャラに急かされてバッグからジャーキーを取り出して、キャラに差し出す。キャラはジャーキーをくわえると、道路にそっと置いた。
「あれ、そういえばここって昨日と同じ場所」
「キャラに訊いてごらんなさいよ」
「キャラ、ここって」
「子犬の魂がここにいるんだ。きっと交通事故かな」
交通事故、あのジャーキーはお供えみたいなものなのかな。
「川のところにも別の犬の魂があるんだよ」
お父さんが言っていたところだ。
「キャラはさ、香さんと二人で地縛霊になりかけている魂を自宅に還してあげたり、供養したりしていたのよ」
「香ひいばあは、そんなことしていたんだ」
「香さんはすごい巫女だったからね。キャラの言葉もわかるし、御招きもできるし。私と檀二人でやったことを一人でできていたのよ」
そんな話をしながら散歩を続け、やがて家についた。萌さんは、早く檀が御招きできるようになるために、神社に修行に来るようにと言い残して帰って行った。えっ、僕いつかあの竹筒のやつできるようになるの? というか修行なんかしないといけないの。
最初のコメントを投稿しよう!