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「で、これが俺への形見分けの品。香ひいばあの懐中時計」
「おしゃれでいいじゃない」
「と思うだろう。ところがどう見ても女性物のデザインなんだよ。まあそれでも、香ひいばあからの贈り物だから大切にするけれどさ」
そう言いながら、懐中時計を大切に胸ポケットにしまった。
「それでだな。お前への形見分けなんだけれどさ」
「ワンワンワンワンワン」
お父さんの説明が終わる前に、部屋に飛び込んできた小さな犬が、千切れんばかりに尻尾を振りながら僕の周りをグルグルと駆け回っている。
「もしかしてさ、これ」
相変わらず興奮状態で、僕の周りを走り回っている小型犬を指さしてお父さんに確認をした。
「正解。香ひいばあからの檀への形見分けはその犬」
「えっ、なにそれ。ごめん、頭が追いつかない」
「だから、これが檀への香ひいばあからの形見分けだって」
「いや、それはわかったんだけれどさ。形見分けに犬ってあるの?」
「どうだろうな。でも、ほら」
お父さんと同時に僕の足元に纏わりついて、相変わらず興奮マックスな犬に目線が向く。
「現にここにいるしな」
「たしかに。それでこいつの名前は?」
「キャラっていうらしいぞ」
こうして、僕は香ひいばあの形見分けとして、香ひいばあが飼っていた愛犬キャラをもらうこととなった。
◆◇◆◇
「ちょっ、そっちじゃないって」
香ひいばあから僕への形見分けとしてキャラがきてから、我が家にはキャラの散歩という仕事が追加された。これは主に、僕とお父さんの仕事になった。
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