今日も僕は犬と巫女さんに引きずられている

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 キャラはパピヨンという犬種で、ブラウンの毛の中に黒の差毛のあるセーブルと呼ばれる毛色の雌の小型犬だ。小型犬だから小学生の僕でも散歩に行けると思っていたのだけれど…… 「キャラ、ちょっと待って、待てって」  リードを操るどころか、僕がキャラに散歩させられているように引っ張られている。ルートも一定しておらず、一度散歩に出たらいつ家に帰れるのか、その日のキャラの気分一つな状況だ。それというのも、香ひいばあから「キャラの散歩はキャラが納得するまで行い、キャラのこと」という条件が出されていたからだ。ということで、今日もキャラの気の向くままに散歩が続いているのだ。  信号のない交差点でキャラがふと足を止めた。道路は車や自転車がひっきりなしに通過していく。 「キャラ、ここはちょっと危ないからもう少し端っこに寄ろうよ。そこでお水とおやつあげるからさ」  僕の言葉を理解したのかはわからないけれど、キャラは大人しく道路の端っこに移動し、お皿に注いだ水を飲んでいる。お皿の水がなくなったタイミングで、おやつ用のジャーキーを差し出すと、キャラはそれを口にくわえたまま歩き出した。キャラの足を止めさせないように、僕は急いでお皿を鞄にしまった。  キャラはジャーキーをくわえたまま少し歩き、そしてそっと道路にジャーキーを置いた。口から落としたではなく、明らかに丁寧に道路に置いたのだ。そしてジャーキーをそのままにしてキャラはまた、僕を引っ張るように散歩を続け始め、そのままたいした寄り道もせずに家に着いた。
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