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「あの、お姉さんは?」
「私は、神代萌。香さんと同じ神社の社務所で働いている巫女」
「神代さんは巫女さん?」
「萌でいいよ。そう、私の職業は巫女。バイトだけれどね」
ああそういえば、香ひいばあは巫女さんだって聞いたことがある。僕はあまり神社とか行かないから詳しいことは分からないけれど、とにかくこちらの萌さんは香ひいばあの知り合いってことだよね。
「さて、じゃあ時間もないから行こうか」
「え、行く? どこに?」
「ほらキャラも行くよ」
萌さんの言葉を聞いたキャラは自分のリードをくわえて、一目散に玄関の方に向かっていった。
「キャラの散歩に行くんですか?」
「そうよ。他になにがあるの?」
残念な人を見る目で僕を見ないでください。ほかに、とか言われてもとにかく僕はまだ全然状況を把握できていない。
「まあ仕方ないか。歩きながら話そうよ。ほら早く行くよ」
萌さんはキャラのリードを手慣れた様子で首輪に装着し、玄関の扉を開けて外に出て行ってしまった。萌さんに置いて行かれないように僕も急いで靴を履き、玄関を出た。
キャラはいつもと同じように、右に左に、進んでは戻りと自由気ままに歩き回っている。萌さんはそんなことを気にする様子もなく、キャラの動きに合わせて歩いている。
「あんた、本当になにも感じていないの?」
そもそも、なにを感じればいいのかがわからない。僕は曖昧な表情を萌さんに向けた。
「香さんに雇われている身としては、ちゃんとやっておかないと、あとで夢枕とかに立たれそうだからなぁ」
「雇われているって?」
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