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「キャラが喋ったぁ」
え、なに。キャラが、犬が人間の言葉喋ってんだけれど。なになになになになに。
「よーし、お目覚め成功。ついでに仕事も教えるや。何回も呼ばれたらたまったもんじゃないし」
萌さんが何故か胸元に竹定規をしまいながら、僕に笑顔を向けてくる。いろんなことでパニックなのに、胸元に竹定規なんて新しい謎を向けてこないでほしい。
「萌さん、なにかしたんですか? キャラは喋りだすし、もうなにがなんだか」
「焦るな、少年。香さんによると、もともと檀には犬と話せる特殊能力があったらしいよ。まあ、香さんのひ孫だもん、なにかしらの能力が遺伝してもおかしくはないんだけれどね」
犬と話せる特殊能力? 香ひいばあも喋れたの? やばい、情報が多すぎて処理が追いつかない。
「まあ、あまり気にするな。特殊能力をもっている人間なんて他にもたくさんいるから」
「そうそう。あたしと話せるようになって嬉しいでしょ」
パニックを抱えたまま、僕より遥かに強い女性二人に引き連れられて再び散歩が始まる。
「いるよ」
いきなりキャラが立ち止まり、マンションの植え込みのあたりを見つめている。
「檀、キャラはなんと言っている?」
萌さんもキャラと同じ方向に目線を向けたまま僕に訊いてきた。
「えっと、確かいるよって」
「それは分かっている。知りたいのは、どんなやつかだ」
いや、どんなやつって言われても、僕には植え込み以外見えていないんだけれど。
「小学校低学年くらいの女の子。青いパーカーに膝丈の白いスカート。髪型はポニーテール。ピンクのリボンをつけている」
「えっ」
「えっ、じゃない。今の情報を萌に伝えてよ」
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