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「なんか、あの竹筒が光って、あの」
「ああ、あれね。この竹筒にお招きしたのよ。さ、急いで行くわよ」
いや、だからおまねきってなんなのか全然わからないんですけれど、ともう一度訊こうとしたときには萌さんはキャラとともに走り始めていた。なんで走るんだろう。
五分ほど走ったろうか、一軒の家の前でキャラが足を止めた。
「この家で間違いない?」
萌さんが玄関を見ながらキャラに確認をする。玄関には赤い子ども用の自転車が置いてある。
「そうだよ。このお家で間違いない」
この家で間違いないってなにが? 頭の中にはずっとはてなマークが出っぱなしだ。そんなとき、ドンっと軽くお尻を蹴られた。驚いて萌さんを見ると僕の方をイラついたような表情で睨んでいる。
「なんですか」
「なんですか、じゃないって。私はキャラの声が聞こえないんだから、檀がちゃんと伝言してもらわないと困る」
「萌さんはキャラの言葉は分からないんですか?」
「だからさっきも檀にキャラの言葉を伝えてもらったでしょうが。で、なんて言っているのよ」
「あ、はい。間違いないって」
そうか、と萌さんは呟いて目の前の家のインターホンを押した。はい、と女性が返事をしたあと、萌さんがインターホン越しに会話を続ける。やがて玄関の扉が開き、中年の男女が姿を現した。
「いまの話はどういうことですか?」
男性が萌さんに突っかかるように口を開いた。
「すべて事実です。こちらのお嬢さんをお連れしました」
お嬢さん、また頭の中のはてなが増えた。
「お嬢さんを、って美羽を連れてきたということか?」
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