囚われの金糸雀【狂愛】

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囚われの金糸雀【狂愛】

 私は貴族になんて生まれなければよかったとさえ思う。  ただの平民だったのなら、彼と出会うことすらなかった、と。  本当にそう思ってしまうから。  裕福な平民と変わらない位、貴族というには質素な暮らしの没落寸前は男爵家の一人娘。  そんな私の幼馴染みは、ずっと地位の高い貴族の長子。  枯れ葉色の髪に灰色の瞳という地味な私と違い、彼は夜空に浮かぶ月のような髪に神秘的な紫水晶の瞳で。  天使のような、煌めく星そのもののような彼に対して、間違っても恋愛感情はない。  世界が違いすぎるから。  生まれ持った美しさも、地位も権力も財力もある彼には、憧れはあっても愛なんてない。恋すらない。  好きになんてなれるわけがなかった。虚しくなるだけだから。 「アデル、好きだよ」  一方的な愛の言葉も、私にとっては残酷なだけ。 「愛してる」  どんなに愛を語られても、私はあなたを好きになれない。  だから、何も答えない。返事もしない。  どうせ私は彼の隣にいられない。  もっとふさわしい人が、彼――ダンの前に現れるはずだから。 「ダン――ダニエル、もうやめて」  耐えられなくなって、拒絶の言葉を口にしたとき、私たちの世界は崩れてしまった。  微笑んでいた瞳には、冷たい光と狂気が宿っている。 「伝え続ければ、いつか応えてくれると思っていたのに」  いつの間にか視界を奪われてしまった。  柔らかい布で目隠しされ、手を引かれる。 「僕の気持ちに応えてくれないなら、仕方ないよね」  感情の読めないダンの声。  抱き上げられてどこかに連れて行かれる。  怖くて抵抗することすら出来ない。 「アデル、君はもう僕の籠の金糸雀だ」  目隠しが外される。  連れてこられたのは、鉄格子のなか。  牢屋というより、巨大な鳥籠のよう。 「もうどこにも行かせない」  目の前の天使は、絶望を告げた。 END?
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