二年前

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 嫌な予感がぬぐえない。あちこち探したが、今までどこにもレチッタのいる痕跡はなかった。この辺りには一切来ていないと見るべきだろう。  村の誰とも関わろうとしないブルギィの旦那を気味悪がる年長者に、止められた。そのせいで彼のところだけ探しに行けていないが、留まるべきではなかったのだ。そうに違いない。これだけ探しても見つからないのだから、あそこにいるに決まっている。  自身の中で確信を得ると同時に、ガジュは鋭く前方を睨んだ。最後のめぼしい場所だ。そこにいなかったら、今度こそ最悪の事態を想像しよう。  そう決めたときだった。背後に、草の揺れる音を聞いた。風に揺らされるのではなく、誰かがかき分けて歩くときに薙ぎ倒される草の音だ。  振り向いた途端、ガジュはあまりの衝撃に声が出なかった。疲れ切った様子のレチッタが、体を丸めて立っている。この数日間必死に探し続けた旧友の姿がそこにはあった。  だが、ガジュがすぐに動き出せなかったのはレチッタを見つけた衝撃のせいだけではない。彼の顔は無惨にもひどく腫れあがり、固まった血が溜まる目元には涙が浮かんでいる。空いた首元にも痣が見えていた。  事件に巻き込まれたのは明白だ。誰かに暴力をふるわれたことも、そこから必死に逃げ出してきたらしいことも。 「ひどい怪我じゃねぇか、すぐに病院に行かないと」  顔面蒼白で駆け寄りながら、ガジュは呆然とつぶやく。  度を越したひどい現実を、受け止めきれていなかった。だが戸惑う時間はない。目の前のレチッタはふらふらで、今にも倒れそうだった。  黙りこくったままの彼に、そっと肩を貸す。抵抗する様子もないのは、疲れているからだけではないと分かる。抵抗を許されない環境下におかれていたのだろう。  それが物理的な拘束によるものか、精神的に縛られたいたことから来るものかは不明だが。
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